越境EC市場は世界的に拡大を続けており、現在、中国や米国向けに大きな成果を挙げている日本企業は多いです。
しかし、越境ECを始めるために、どんなマーケティング手法を取っていいか分からない、というのが実情ではないでしょうか。
本記事では、越境ECの戦略・手法について、実例を交えて分かりやすく解説します。
越境EC市場の拡大
越境ECの市場は、世界規模で年々拡大を続けています。経済産業省の調査によると、令和2年の世界全体の越境ECの市場規模は85兆円、2026年には約6.2倍の530兆円まで拡大することが予想されています。
特にEC市場規模の大きい米国・中国・日本の数値は以下の通りです。
参考:令和2年度電子商取引に関する市場調査 公表資料(令和3年7月30日)
なお、中国から日本への越境EC購入額は1兆9,499億円(前年比17.7%増)、米国からの購入額は2兆3,119億円(前年比15.1%増)であり、いずれも昨年に引き続き増加しています。世界規模でEC市場が増加を続ける理由については、以下の2点が指摘されています。
- 世界中にインターネットインフラが整い、インターネットを使用する人口が増えている
- 海外のEC消費が伸びている
参考:【2019年版】世界のインターネット普及率&回線速度ランキング
参考:中国EC市場と活用方法(独立行政法人日本貿易振興機構)
今後もこの傾向は続いていくと予想されるため、越境ECの重要度はより増していくことでしょう。
越境ECのマーケティング手法5つをご紹介
越境ECで成果を上げるにあたって、主に採用されるマーケティング手法を5つ紹介します。
①コンテンツマーケティング
コンテンツマーケティングとは、顧客にとって価値のあるコンテンツを作成・発信することで、最終的には商品・サービスのファンにまでなってもらって、購入してもらうマーケティング手法のことです。
具体的には、Instagram・FacebookなどのSNS、オウンドメディア、YouTubeなどのコンテンツが例として挙げられます。魅力的な商品の画像や商材にまつわるお役立ち情報記事など、顧客が興味を持ちやすいコンテンツを発信することが、コンテンツマーケティング成功の鍵になってきます。
②バイラルマーケティング
バイラルマーケティングとは、不特定多数の人たちに主に口コミによって広めていき、仕掛けていくマーケティング手法のことを指します。「ウイルス性の」という意味の英単語「viral」からきています。
バイラルマーケティングは、企業側でなく、商品やサービスを利用したユーザーがSNSや口コミサイトなどで拡散を行うことで購入に繋げます。第三者からの視点となるため、企業側が自社の商品を宣伝するよりもユーザーにとって信憑性・公平性のある情報となり、高い販促効果を期待できます。
時には何千・何万ものインプレッションを得ることもあり、ユーザー次第で大きく効果が左右され、非常に効果の上限が高い手法といえます。
似たような手法として「リファラルマーケティング」というものがありますが、こちらはバイラルマーケティングと異なり、一般ユーザーが商品を「意図的に」紹介します。
③使いやすいサイトデザイン設計(UI・UXの向上)
ユーザーが使いやすいサイトデザインを考えることも、立派なマーケティング手法の一つです。ECサイトへの集客は越境ECのマーケティングにおいて最重要項目ですが、そもそもとしてECサイトが使いづらければ売上には繋がりません。
ユーザーにとって使いやすく、商品の購入に繋がりやすいサイトにするためには、以下のポイントを押さえてデザインする必要があります。
- 商品は探しやすいか
- 商品を購入するための導線がスムーズに引かれているか
- 十分な数の画像など、信頼に足る商品の情報が記載されているか
- 海外の人でも使いやすいサイトになっているか
上記の中でも、特に4については十分に注意しなければなりません。国によって、定番となるサイトデザインが異なる可能性があるためです。
例えば、中国のECサイトではサイト上部に検索バーがついているのが当たり前で、これに沿ってサイトデザインをしなければ、使いにくいサイトとしてユーザーが離れてしまう可能性があります。 越境ECの販売が伸び悩んでいる方は、上記1〜3のポイントと、出品先の国の、最適なECサイトのデザインを調べてみることをおすすめします。
④インフルエンサーマーケティング
インフルエンサーマーケティングとは、Twitter・Instagramなどの各SNSや、YouTubeなどで消費者に大きな影響力を持つ「インフルエンサー」に商品やサービスをPRしてもらうマーケティング手法です。現在、特に中国では爆発的にこの手法が効果を上げています。
インフルエンサーの影響力の源は多数のファン(フォロワー、登録者など)です。ファンは自分の好きなインフルエンサーがPRした商品を、「私も好きなインフルエンサーと同じものを使ってみたい」「憧れのインフルエンサーが言うのなら間違いないだろう」と購入します。商品自体の魅力は当然必要ですが、インフルエンサーの影響力という商品とは別軸のセールスポイントを商品に付加できるため、海外のユーザーにとって知名度のない商品であっても、効果的に購入に繋げることが可能になります。
⑤各種広告の活用
日本国内で主要な広告チャネルといえばリスティング広告やSNS広告などがありますが、海外には日本ではあまり採用されないような広告チャネルも多く存在します。
例えば米国では、ポッドキャスト広告やCTV/OTT(Connected TV / Over The Top)が盛んです。日本ではあまり馴染みのないポッドキャストですが、米国では娯楽として浸透しています。他のチャネルと異なり、ポッドキャストはエンゲージメント率がかなり高いといわれており、およそ80%のリスナーが、ポッドキャストのエピソードを最後まで聞いているとされています。
また、近年各種ストリーミングサービスが急成長し、CTVの広告費は2021年に110億ドル、2024年には190億ドルに成長すると予想されています。
参考:More users tune in as CTV continues to rise
このように、各国にとって最適な広告のチャネルを選択することは、越境ECの広告効果を高めるために重要といえます。
越境ECで成功した日本企業の事例
ここでは、越境ECで大きな成果を上げている日本企業の事例を3つ紹介します。
事例①:世界130ヵ国以上にアニメ・漫画関連グッズを出店販売(Tokyo Otaku Mode)
Tokyo Otaku Modeは、日本のアニメ・漫画・ゲームなどの関連グッズを世界130ヵ国以上に販売しているECサイトです。2022年5月時点でFacebookのいいね数は2000万を超え、世界中から注文が殺到している状況です。
コンテンツマーケティング(Facebook)によって、越境ECを成功させた良い例といえます。商品の詳細な画像とファン感溢れるテキストは、なかなか日本国内のグッズ情報を手に入れる機会のない海外ファンにとって重要なコンテンツとなったことでしょう。
事例②:2,000点の伝統工芸品を世界に出店販売(A-JANAIKA JAPAN)
日本の質の高い伝統工芸品は、近年アニメ・漫画などでの後押しもあり、現在海外需要が増しているところです。A-JANAIKA JAPANは、2,000点以上の日本の伝統工芸品を取り扱う人気ECサイトです。包丁や化粧筆から、甲冑や日本刀、オーダーメイドの着物に至るまで幅広く取り扱っています。
こちらもコンテンツを発信しており、YouTubeでは職人の業や各工芸品の歴史を紹介するなど、伝統工芸品への理解を深めることができます。
また、現地では甲冑を着てチラシを配るなど、インパクトのある宣伝施策も行っているようです。
事例③:中国「独身の日」に電子美容機器部門で販売・売上シェア1位を獲得(ヤーマン)
2020年に中国の大手ECサイト「アリババ」が開催したセールスイベント「独身の日」に、美容機器ブランドのヤーマンが電子美容機器部門で販売・売上シェア1位を獲得しました。売れ筋だった商品の1つである美顔器「フォトプラス プレステージ S」の売上は、推定4.96億円といわれています。
参考:ヤーマンが業績予想を上方修正 アリババ『独身の日』で輸入1位(ECのミカタ)
上記の記事では、売上が伸びた要因として、扱う製品がユーザーの需要に合ったこと、現地代理店と提携し、セールではECサイトとライブ配信を組み合わせた販売形態である「ライブコマース」を配信し、製品の機能や特長、さらに技術面を詳細に説明し、視聴者とのコミュニケーションを通して販売促進を強化できたことなどが挙げられています。
中国ではライブコマースが大きな市場となっています。現地でのポピュラーな販売手法を取り入れることは、越境ECが成功する要素として重要なものの1つといえるでしょう。
越境ECはマーケティング戦略がカギ
本記事では、越境ECのマーケティング手法と成功事例についてご紹介しました。
越境ECは非常に魅力的な市場といえますが、しっかりとマーケティング手法・戦略を組んでおかないと確実な売上には繋がっていきません。取り扱う商品や販売先に応じて、適切なマーケティング手法を選択し、ぜひ成功を収めて下さい。
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