SIPSとは?SNSマーケティングにおける新たな消費者行動モデル

SIPSとは?SNSマーケティングにおける新たな消費者行動モデル

SIPS(シップス)とは、ソーシャルメディアを積極的に活用することを前提として考えられた消費者行動モデルのことです。

本記事では、SIPSについてや、消費者行動モデルについて解説します。InstagramやX(旧Twitter)などのソーシャルメディアを活用したマーケティングをより効果的にするために、ぜひ参考にして下さい

SIPS(シップス)ができた理由

SIPS(シップス)ができた理由

年々、X(旧Twitter)やInstagramなどSNSを含むソーシャルメディアは生活に密接し、今後も我々のコミュニケーションの方法は変化していくことが予想されます。

SIPSは、ソーシャルメディアを重視し、従来の購買モデルのAIDMA(アイドマ)やAISAS(アイサス)に取って代わるものではなく、より現状を反映したソーシャルメディアを積極的に活用した今までにない新しい消費者行動モデルとして考えられています。

あくまでソーシャルメディアの浸透を契機に、消費者が普段獲得している情報の取得経路や購買への動機づけがどんどん変容している点に注目し、消費者の消費の在り方や社会意識の変化も含めて、消費者の行動を「消費者視点」でより深く掘り下げています。

SIPS(シップス)とは

SIPS(シップス)とは
SIPSは、2011年1月に電通の佐藤尚之氏をリーダーとした社内ユニット「サトナオ・オープン・ラボ」(後の電通モダン・コミュニケーション・ラボ)が提唱した、ソーシャルメディアに対応した生活者消費行動モデルです。

  1. S(Sympathize:共感する)
  2. I(Identify:確認する)
  3. P(Participate:参加する)
  4. S(Share&Spread:共有・拡散する)

上記の頭文字を取り、SIPSとなっています。企業のコミュニケーション・プランニングなどにおいて、ソーシャルメディアを積極的に利用している消費者行動を考える上の一つの概念です。

SIPSは、Sympathize(共感する)→Identify(確認する)→Participate(参加する)→Share&Spread(共有・拡散する)というサイクルで回ります。

SIPS(シップス)とはSIPSの図2

 

1.共感する(Sympathize)

企業が商品広告をただ出すだけでは、消費者の共感(Sympathize)を得ることは難しいです。商品に対して共感を得るためには商品力も重要ですが、普段からの広告、広報活動も重要になってきます。

商品自体の魅力も必要ですが、企業活動、社会貢献活動、PR活動などの企業イメージもポイントになります。あの企業が出している商品だからチェックしてみよう、逆にあそこの会社は不祥事を起こしたから買わないでおこう、など思ったことが一度はあるかと思います。

また宣伝したい商品を共感し拡散する人が、信頼できる友人、有名人、有識者など、誰がその情報を語るかによって力の大きさは変わっていきます。

消費者に共感してもらうためには、いかに消費者に共感される広告、そして誰がどのようにアプローチ表現するかがポイントになってきます。

2.確認する(Identify)

消費者は共感しても、すぐ参加(Participate)することはありません。AISASの場合では、消費者は検索(Search)のあとに行動(Action)し、商品購入となりますが、情報洪水と成熟市場により、消費者はかつてよりはるかに賢く疑い深くなりました。

日本社会の長い不況とエコ意識の高まりもあり、余計な物を買ったりすることに慎重になっている傾向です。

共感した商品でも本当に自分に有益かどうか、価値観があっているかどうかを、検索だけでなく親しい友人や家族、そして知人の意見、専門家など、あらゆる多くの手段で確認(Identify)します。共感を経て情報や商品が自分の価値観に合い、有益であることが確認され、初めて参加(Participate)へとすすみます。

3.参加する(Participate)

SIPSモデルにおいての共有行動は、必ず購買を伴う必要はありません。

購買まで至らなくても、「ちょっといいかも!」と思ったり「とりあえず友人に伝えよう」という考えで、X(旧Twitter)の「リポスト」やFacebookの「いいね!」ボタンなどを押し、軽い気持ちで友人・知人に広めることが、結果的に友人・知人の購買につながる場合があるからです。

そして、ある企業ブランドを応援したり、批判を擁護したりする行動も、友人や知人の興味喚起につながるため、参加(Participate)していると捉えることができます。

実際の購買を伴わない行動も次の行動に繋がる可能性が高いため、共感(Share&Spread)に次ぐ重要な要素して、SIPSでは参加する(Participate)としています。

4.共有 & 拡散する(Share & Spread)

ソーシャルメディアの特徴の一つに「リアルの友人や知人を見つけやすい」という点と、「リアルな人間関係をソーシャルメディア上に持ち込みやすい」という点があります。

消費者は参加活動や情報を確認(Identify)を経て、参加(Participate)し友人・知人に、主にソーシャルメディア上で共有(Share)します。

さらにソーシャルメディアでつながった情報経路は、あなたが属しているコミュニティーをも超越して、他のコミュニティーへも自動的かつ無自覚に広まって行きます。

これが拡散(Share)であり、「SIPS」においてとても重要な概念です。

SIPSのサイクルが回ると母数が拡大していく

最後に情報を拡散する役目を担うのが企業ではなく私たち消費者自らであることで、ほかの消費者の共感を呼びやすく、SIPSが何度も循環していくことで、参加者の母数がどんどん大きくなっていきます。

母数拡大ループこそソーシャルメディア時代のキャンペーンのキーポイントであり、参加人数の母数を増やすことで結果的に購買の増大につながっていくのです。

消費者行動モデルとは?

消費者行動モデルとは?

消費者行動モデルとは、消費者が商品やサービスを購入するまでの心理状態や行動をモデル化したものです。マーケティングにおいては、消費者が商品やサービスを目にしてから、購入に至るまでの心理や実際の行動を把握することが重要であり、その一助として、さまざまな消費者行動モデルが提唱されています。

消費者行動モデルは、マーケティングの戦略立案施策検討に活用されます。例えば、AIDAモデルを用いれば、消費者の認知を高めるための広告や、関心を喚起するためのキャンペーンを実施することができます。

また、AISASモデルを用いれば、消費者が商品やサービスについて自ら情報収集する傾向があることを踏まえて、検索結果やSNSでの口コミを活用したWebマーケティングを実施することができます。

ユーザーの心理を理解し、効果的な投稿を発信することで、マーケティングの効果を高めることができます。消費者行動は、時代や社会の変化とともに変化していきます。そのため、消費者行動モデルは常に最新の情報を反映させる必要があります。

従来のモデル、AIDMA(アイドマ)AISAS(アイサス)とは?

従来のモデル、AIDMA(アイドマ)AISAS(アイサス)とは

従来のモデルであるAIDMA(アイドマ)と、インターネットの普及に伴って変化したAISAS(アイサス)について、それぞれの特徴を解説します。

AIDMA(アイドマ)

AIDMAは、Attention(注意)→ Interest(関心)→ Desire(欲求)→ Memory(記憶)→ Action(購買)の5つのプロセスを表した消費者の購買行動モデルです。

AIDMAは、1950年代にアメリカの心理学者であるアルバート・ハッサンが提唱したモデルで、長い間マーケティングの基礎理論として用いられてきました。

AISAS(アイサス)

AISASは、AIDMAと比較して、AISASには以下の2つの特徴があります。

  • インターネットの普及に伴う消費者の購買行動の変化を反映している。
  • 消費者の購買行動をより細かく捉えることができる。

AISASは、インターネットの普及に伴い、消費者の購買行動が変化したことを反映したモデルです。マーケティングにおいては、AISASを理解した上で、消費者の購買行動に適したマーケティング施策を実施することが重要です。

情報の伝わり方の変化

情報の伝わり方の変化
ソーシャルメディアが普及したことで、広告コミュニケーションに大きくふたつの変化をもたらしました。

マスメディア全盛期の時代は、新聞や雑誌、ラジオ、そしてテレビに加えて街頭などでの広告、チラシ、店頭媒体などを利用し、発信者サイドのメッセージを消費者へ届けるシンプルな構造でした。

しかし、インターネットが普及が拡大したことで、消費者自身が情報検索したり共有発信が簡単にできるようになり、マスメディアだけでなく新たな情報入手経路を得ることとなりました。

双方向になった情報伝達

あらゆる情報伝達がデジタル化したことにより、今まで一方通行であった情報伝達が、インターネットが双方向の情報のやり取りを可能にしたことが相まって、生活者が日常触れる情報量は格段に増加し、今や主流となっています。

消費者の生活背景を踏まえ、SIPSは単に消費に関するプロセスの変容を表したものだけではなく、消費のあり方そのものや、消費者の社会意識の変化も指摘したモデルであると考えられます。

共有と拡散はゴールではなく次の共有への始まり

共有と拡散はゴールではなく次の共有への始まり
情報伝達の方法は今やソーシャルメディアが主流となり、SIPSはソーシャルメディア時代のマーケティングやコミュニケーション施策をするうえで欠かせないものとなっています。

実際、広告コミュニケーションは『つながり』と『共感』をキーポイントに大きく変化しています。しかし、忘れていけないのは、SIPSの共有&拡散はゴールではなく、次の共感へのスタートだということです。

サイクルを一度回して満足せず、次々とサイクルを回す必要があります。SIPSのサイクルをソーシャル上で何度も回し、サイクルのレベルを徐々に高め、ブランディングだけでなく企業に対するファンをどんどん増やしていく必要があります。情報を再認知させることは消費者の満足度も高まり、共有行動の後押しにもつながります。

ソーシャルメディアとマスメディアを併用する

ソーシャルメディアとマスメディアを併用する
またSIPSのサイクルを回す「つながり」の中心にいる応援者や支援者の獲得やアプローチをにソーシャルメディアだけに頼るのではなく、情報拡散を加速させるという意味においてマスメディアによるアプローチも大切です。

ソーシャルメディアに深くかかわっている人も、実は相当部分でマスメディアの影響を受けているということも忘れてはいけない点です。

まとめ

SIPSは、ソーシャルメディア時代の消費者行動を理解するために有効なモデルです。マーケティング戦略を立てる際には、SIPSを参考にし、消費者の行動を踏まえた施策を実施することが重要です。

近年では「Z世代」とも呼ばれているSNSネイティブ世代が、日常やコミュニケーションでSNSを使う上で様々なトレンドや流行語などを生み出しています。

近年では、SNSネイティブ世代が、コミュニケーションや日常の中でSNSを使うのは当たり前のようになってきています。

宣伝したい製品やサービスの特性や情報と接触する起点によっては、すべてがSIPSに当てはまるわけではありません。AIDMAやAISASが有効な場合もあるので、ケースごとによって考え方を変えていきましょう。

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