中小企業の海外市場開拓！成功のための5つのステップと成功事例を紹介

海外市場開拓は、企業が新たな成長を実現するための戦略的選択です。

グローバル市場での成功は、売上拡大やリスク分散につながり、特に中小企業（SMEs）にとって大きなチャンスとなります。しかし、計画的な準備がなければ失敗のリスクも伴います。

この記事では、海外市場開拓を成功させるための「5つのステップ」と「3つのチャネル」を軸に、初心者にもわかりやすく、実践的な方法を解説します。また、成功事例や使える補助金なども併せて紹介します。

まずは海外市場開拓の基本を押さえる

海外市場開拓を始める前に、その意義や基本的な概念を理解することが重要です。

まずは海外展開の定義や販路の種類を説明します。

海外展開とは？

海外展開とは、自国以外の市場で製品やサービスを提供する活動を指します。輸出、海外子会社設立、代理店契約、Eコマースなど、さまざまな形態があります。国内市場が飽和状態にある企業にとって、海外市場開拓は新たな顧客層の獲得や収益源の多様化を可能にします。また、国際的なブランド認知度向上やリスク分散にも貢献します。

海外展開のメリットは以下のとおりです。

• 市場拡大: 新たな顧客層へのリーチ
• リスク分散: 国内市場の変動に左右されない経営基盤
• イノベーション促進: 異文化から学ぶ製品改良の機会

ただし、言語や文化の違い、法的規制への対応、市場調査の徹底など、現地のニーズに合わせた準備が必要です。

JETRO（ジェトロ）の市場調査レポートを活用すれば、無料で詳細なデータを入手できます。

海外販路とは？種類と選び方

海外販路とは、海外市場で製品やサービスを販売するための流通・販売経路のことです。

主な販路には、直接輸出、代理店契約、Eコマースプラットフォーム、合弁事業などがあります。

• 直接輸出: 自社で販売や物流を管理するので利益率が高いが、関税や物流管理が課題
• 代理店契約: 現地パートナーに販売を委託するので初期投資を抑えられるが、手数料が発生
• Eコマース: Amazon（アマゾン）やAlibaba（アリババ）、Lazada（ラザダ）などを活用するので低コストな市場参入が可能

【海外販路のメリットと課題】

販路	メリット	課題
直接輸出	高い利益率、ブランド管理容易	物流・関税の複雑さ
代理店契約	現地知識の活用、初期投資軽減	手数料、パートナー依存
Eコマース	迅速な参入、低コスト	競争激化、プラットフォーム依存

販路選択では、ターゲット市場の特性や自社のリソースを考慮する必要があります。

現在、東南アジア市場（インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム）はEコマースが大きく成長しています。東南アジアのAmazonと呼ばれるLazadaでのオンライン販売開始がおすすめです。

海外市場開拓を成功させる5つのステップ

海外市場開拓を成功させるには、体系的なアプローチが不可欠です。ここでは、具体的な「5つのステップ」を紹介します。

ステップ1：海外市場調査を徹底する

海外市場調査は、成功の基盤となるプロセスです。ターゲット市場の消費者ニーズ、競合状況、法的規制を詳細に分析します。

調査のポイントは、次のとおりです。

• 消費者ニーズ：購買習慣や好みを把握
• 競合分析：現地企業の強みや価格帯を調査
• 法規制：関税、輸入規制、認証基準を確認

JETROや民間の調査会社を利用して無料レポートや有料データを集め、現地のニーズに合った製品開発やマーケティング戦略を立てましょう。調査不足は失敗の大きな要因となるため、JETROの無料相談を活用するなどして、まずは調査を始めることをおすすめします。

専門のアドバイザーが海外進出に関する相談に無料で対応してくれます。調査に基づく戦略立案は、成功確率を大きく高めます。

ステップ2：海外展示会で認知度を高める

海外展示会への出展は、ブランド認知度向上や現地パートナーとの接点を作る有効な手段です。たとえば、ドイツの「ハノーバーメッセ」や中国の「広州交易会」は、中小企業にも門戸が開かれています。

出展のメリットは、次のとおりです。

• 直接的な顧客接点：現地バイヤーとの商談機会
• 市場テスト：製品の反応をリアルタイムで確認
• ネットワーク構築：代理店やパートナー候補との出会い

出展には費用がかかりますが、中小企業等海外展開支援事業費補助金などを活用すれば、費用をカバーできます。出展前には、現地向けの製品資料やサンプルを準備し、効果的なプレゼンテーションを心がけましょう。

展示会を活用し、自社のブランドを世界に発信しましょう。

ステップ3：現地向けプロモーションを展開する

海外プロモーションは、ターゲット市場での認知度を高める鍵です。SNS広告、インフルエンサーマーケティング、現地メディアへのPRなど、多様な手法があります。東南アジアではInstagramやTikTokが若年層に人気です。

プロモーションの例は、次のとおりです。

• SNS広告：地域ターゲティングで低コストにリーチ
• インフルエンサー：信頼できる現地の人物を起用
• 現地メディア：プレスリリースでブランドをアピール

プロモーションでは、現地の文化や価値観を尊重した効果的なキャンペーンを展開しましょう。

ステップ4：現地パートナーと強固な関係を築く

現地の代理店、ディストリビューター、合弁企業などとの連携は、海外市場開拓の成功を加速します。信頼できるパートナーを見つけるには、JETROのマッチングサービスe-Venueや展示会での対面交渉が有効です。

パートナー選定のポイントは、次のとおりです。

• 実績：過去の取引実績や評判を確認
• ネットワーク：現地の販売網や顧客基盤の強さ
• 相性：自社のビジョンとの一致度

信頼関係の構築には時間がかかりますが、初期の努力が大きな成果につながります。JETROの支援を活用し、今すぐ信頼できるパートナー候補を探しましょう。

ステップ5：テストマーケティングでリスクを最小化

大規模な投資を行う前に、テストマーケティングを実施することでリスクを抑えられます。小規模な地域や限定的な販路で製品を試し、反応を確認しましょう。たとえば、Amazonではグローバルセリングプログラムで限定販売を行い、消費者のフィードバック収集を行えます。

テストマーケティングの方法は、次のとおりです。

• Eコマース：Amazon・Alibaba・Lazadaなどで少量販売
• ポップアップストア：現地の商業施設で短期出店
• サンプル提供：現地バイヤーに無料サンプルを配布

テスト結果を基に、製品改良や価格設定を調整します。

テストマーケティングは、失敗のコストを抑え、成功の確度を高めます。小さな一歩から始め、データに基づく戦略を構築しましょう。

海外市場開拓での中小企業（SMEs）の成功事例

企業名/事例	地域	成功要因	参考URL
タマダ産業	ベトナム	市場調査、現地生産、技術移転、JICA支援	Japan’s SMEs Provide Solutions for Sustainable Growth
HLS Global（設備製造業）	インド	市場分析、パートナー選定、展示会参加支援	Global Expansion – HLS Japan
HLS Global（自動車部品製造業）	グローバル	移転価格ポリシー策定、税務リスク軽減	Global Expansion – HLS Japan
X-HUB TOKYOの分析（仮称）	–	現地人材採用、現地顧客開発	Analysis of current conditions reveals trends among SMEs expanding overseas
JETRO支援事例（一般）	グローバル	展示会出展、ECプラットフォーム活用、JETRO支援	Helping Japanese SMEs Expand Their Businesses Overseas

1. タマダ産業株式会社（Tamada Industries）のベトナム進出

石川県に本社を置くタマダ産業は、JICA（国際協力機構）の支援のもと、ベトナムのハイフォンで安全な二重壁構造を持つガソリン貯蔵タンクを製造・販売し、環境汚染防止に貢献しています。2013年には現地子会社を設立し、工場を建設しました。

JICAの支援内容は、市場調査、生産ライン計画、現地企業Petrolimexとの協力、そして現地エンジニアの訓練におよびます。これらの取り組みにより、70人の雇用創出、売上拡大、持続可能な事業モデルの確立を実現しました。タマダ産業の成功要因は、徹底的な市場調査、現地生産体制の構築、そして技術移転にあります。

参考URL: Japan’s SMEs Provide Solutions for Sustainable Growth

2. HLS Globalの支援事例

HLS Globalは、日本企業の海外進出を支援するグローバルビジネスコンサルティング会社です。

ウェブサイトでは、設備製造業のインド進出事例として、市場分析、価格分析、パートナー選定、競合分析などの支援内容と、販売・マーケティング支援、展示会参加支援、戦略的ビジネス計画策定などの成果が紹介されています。

また、自動車部品製造業の事例として、グローバル移転価格ポリシー策定と子会社向け移転価格文書準備の支援内容、税務リスク軽減と海外事業の円滑な運営の成果が示されています。

参考URL: Global Expansion – HLS Japan

3. X-HUB TOKYOの分析から

X-HUB TOKYOは、東京都が運営する、日本の中小企業の海外進出に関する分析を提供する組織です。

2019年の記事「Analysis of current conditions reveals trends among SMEs expanding overseas」では、中小企業の海外進出の成功要因として、海外事業推進のための適切な人材確保と、現地での顧客基盤の構築が重要であると指摘されています。

また、中小企業がグローバル人材育成に苦労する傾向があるため、現地人材の活用やコンサルタントの利用を推奨しています。

参考URL: Analysis of current conditions reveals trends among SMEs expanding overseas

4. JETROの取り組みとケーススタディ

JETRO（日本貿易振興機構）は、日本企業の海外進出を支援する主要な組織であり、特に中小企業に対して、展示会出展、市場調査、補助金に関する案内などの支援を提供しています。

2019年10月1日のプレスリリースによると、JETROは「新輸出国づくりコンソーシアム」プログラムの一環として、100社以上の中堅・中小企業の海外事業展開成功事例をまとめた「海外事業展開成功事例集」を発行しました。

これは、海外市場開拓で成功した企業のベストプラクティスを解説する初の参考資料とされています。JETROの支援を受けた多くの企業が、展示会出展やJAPAN MALL、Japan Streetなどのデジタルプラットフォームの活用を通じて新たな販路を開拓し、売上を拡大しています。

参考URL: Helping Japanese SMEs Expand Their Businesses Overseas

事例から読み取れる成功の共通ポイント

• 外部支援の積極的な活用:

JETROやJICAといった支援機関のサポートを初期段階から活用することで、市場調査、資金調達、パートナー探しなど、海外展開におけるさまざまなハードルを乗り越えることができます。X-HUB TOKYOの分析でも、人材確保やコンサルタントの活用が推奨されています。

• 現地パートナーとの連携:

信頼できる現地の企業や専門家との提携は、市場参入をスムーズにし、事業の成長を加速させます。HLS Globalの事例は、適切なパートナー選定と市場分析の重要性を示唆しています。

• 製品・サービスの現地化:

既存の製品やサービスを海外展開する際は、現地のニーズや文化に合わせた適切なローカライズが不可欠であり、単に持ち込むだけでは成功しません。タマダ産業は現地生産体制を構築し、環境への配慮も加えた事業モデルを確立しています。

• 認知度向上のための努力:

展示会への出展やデジタルマーケティングなど、多様なチャネルを通じてブランド認知度を高めることが、市場での成功につながります。JETROの支援を受けた企業は、これらの活動を通じて販路を拡大しています。

海外市場開拓で活用すべき3つのチャネル

海外市場開拓では、適切なチャネルの確保が成功の鍵です。「流通」「販売」「コミュニケーション」の3つのチャネルをバランスよく活用しましょう。

流通チャネル：効率的な物流網を構築

流通チャネルは、製品を顧客に届けるための物流網です。直接輸出、第三者物流（3PL）、現地倉庫の利用などがあります。アジア市場では、シンガポールの物流ハブを活用することで効率化が可能です。

流通チャネルのポイント:

• コスト管理：関税や送料を最適化
• スピード：迅速な配送で顧客満足度を向上
• 信頼性：物流パートナーの実績を確認

物流の効率化は、顧客体験に直結します。信頼できる物流パートナーと契約し、配送遅延のリスクを最小限に抑えるなどの工夫が必要です。

販売チャネル：最適な販売経路を選ぶ

販売チャネルは、製品を直接顧客に届ける手段です。Eコマース、代理店、小売店など、市場に応じた選択が重要です。欧州では現地の小売チェーンとの提携が効果的です。

販売チャネルの例:

• Eコマース：低コストで広範囲にリーチ
• 代理店：現地の販売網を活用
• 直営店：ブランドイメージを直接管理

現地の購買習慣を調査し、複数のチャネルを組み合わせることで売上を最大化しましょう。中小機構の販路開拓支援なども活用すれば、より円滑な展開が可能です。

コミュニケーションチャネル：現地顧客との信頼を築く

コミュニケーションチャネルは、顧客との接点を構築する手段です。SNS、メールマーケティング、現地イベントなどが含まれます。現地の言語や文化に合わせたコミュニケーションが信頼を築きます。

コミュニケーションチャネルの例:

• SNS：地域ごとの人気プラットフォームを活用
• イベント：現地の展示会やセミナーで直接対話
• カスタマーサポート：多言語対応の窓口を設置

米国市場ではユーザー数の多いFacebookでの積極的な発信が効果的です。現地の顧客と継続的に対話することで、ブランドの信頼性が高まります。

海外市場開拓のチャネル選択フローチャート

各チャネルをバランスよく活用することで、市場での存在感を高められます。まずは現地の人気SNSを調査し、コミュニケーションから始めましょう。

海外市場開拓を支える補助金と支援策

資金面のサポートは、海外市場開拓の成功を後押しします。補助金や支援機関を活用することで、初期投資の負担を軽減できます。

補助金の種類と申請のポイント

日本では、経済産業省やJETROが中小企業向けの補助金を提供しています。代表的なものは以下のとおりです。

• 中小企業等海外展開支援事業費補助金：展示会出展や市場調査の費用を最大300万円補助（補助率1/2）
• ものづくり補助金（グローバル市場開拓枠）：4つの類型に分かれており、100万円～、最大3,000万円まで補助（補助率1/2、小規模企業者・小規模事業者 2/3）
• グローバルサウス未来志向型共創等事業費補助金：FS事業では最大1億円です。小規模実証事業では最大5億円です。（どちらも補助率1/2、中小企業2/3）
• 技術協力活用型・新興国市場開拓事業（制度・事業環境整備事業）：海外市場開拓を直接的に支援するものではないですが、開発途上国におけるビジネス環境整備を通じて、海外展開を間接的に支援する制度です。補助額は11億2,000万円
• 事業再構築補助金：この補助の対象となるのは国内での事業再構築であり、海外市場開拓そのものではありません。しかし、国内生産拠点を整備し、海外市場への展開を目指す場合には有効です。補助額は1,500万円〜最大1.5億円（補助率は、中小企業 1/2  短期に大規模な賃上げを行う場合は2/3、中堅企業 1/3）
• 協力準備調査（海外投融資）：開発途上国における民間資金を活用した事業を計画している民間法人を支援するもので、実施にかかる経費は、JICAが負担します。

補助金申請のポイントは、次のとおりです。

• 事業計画書を明確に：具体的な海外進出計画を記載
• 条件確認：企業規模や対象国を確認
• タイミング：申請期限を事前にチェック

JETROなどの無料相談を活用し、申請書類の準備を進めましょう。補助金を活用することで、資金面の不安を軽減し、戦略的な投資が可能です。

支援機関をフル活用する

JETRO、中小機構、日本商工会議所は、海外進出を無料で支援してくれます。

それぞれの主なサービスは以下のとおりです。

• JETRO：市場調査レポート、パートナー紹介、展示会支援
• 中小機構：海外進出コンサルティング、セミナー開催
• 商工会議所：地域企業向けの個別相談

たとえばJETROの海外進出支援では、無料で法規制情報や市場動向などが得られます。支援機関を活用することで、専門知識の不足を補い、効率的な進出が実現できます。

支援機関は、中小企業にとって心強い味方です。

海外市場開拓の課題と解決策

中小企業が海外市場開拓で直面する課題は多いですが、適切な対策で克服可能です。代表的な課題と解決策を紹介します。

中小企業の主な課題

中小企業が直面する課題は、資金不足、専門知識の不足、現地ネットワークの欠如です。関税や法規制の知識不足がコスト増を招くケースがあります。

• 資金不足：初期投資や継続的な運営資金
• 知識不足：現地の法規制や市場ニーズの理解
• ネットワーク不足：信頼できるパートナーや顧客基盤

これらの課題は、事前準備と外部リソースの活用で克服可能です。

課題を克服する具体策

以下のアクションで、課題を効果的に解決していきましょう。

• 市場調査の徹底：JETROのレポートや現地視察で情報を収集
• 補助金活用：資金負担を軽減し、投資余力を確保
• パートナー連携：現地の代理店やコンサルタントと協力
• テストマーケティング：小規模な試行でリスクを管理

既存レポートを基に、競合の動き、顧客ニーズ、法規制、流通網など、事業展開の詳細情報を抽出し分析します。過去のレポートも調査し、市場の変化や動向を把握します。実際に現地を訪問し、競合店や商業施設を視察して消費者の購買行動や商品陳列を直接確認し、現地のビジネス習慣や商慣習への理解を深めます。

次に、国や自治体、業界団体が提供する補助金・助成金情報を幅広く収集し、各制度の目的、対象、期間、金額などを比較検討します。補助金・助成金申請の専門家に相談し、自社の事業計画に適した制度の選定や申請書類作成のアドバイスを得ることも有効です。

そして、自社の商品・サービスに適した現地の代理店や販売パートナーを探し交渉します。現地の市場慣習、法規制、ビジネスネットワークに詳しいコンサルタントとの連携もおすすめです。本格参入前に、特定の地域や顧客層に絞り、オンラインストア、ポップアップストア、特定小売店など限定的な販路でテスト販売を実施します。課題が見つかった場合は再度テストマーケティングを行い、検証を繰り返します。

まとめ：今すぐ始める海外市場開拓

海外市場開拓は、中小企業にとって成長の大きなチャンスです。「5つのステップ」と「3つのチャネル」を活用し、戦略的に進めましょう。

5つのステップ：市場調査、展示会、プロモーション、パートナー連携、テストマーケティング 3つのチャネル：流通、販売、コミュニケーション

また、補助金や支援機関をフル活用することで、リスクを抑え、成功確率を高められます。

そして、自社で今すぐできるアクションは、以下3つです。

• JETROの無料相談を予約し、市場調査の第一歩を踏む
• 補助金申請の準備を始め、資金面を強化
• 現地のSNSでテストマーケティングを試す

海外市場開拓は、準備と行動力があれば必ず成功します。あなたの一歩が、グローバルな成功への道を開きます。今すぐ行動を起こしましょう！